『本の旅、知の飛翔』というBOOKのデザインをしました。
大塚明生氏が産経新聞で連載している書評をまとめた小冊子です。
まあ、なんという素敵なデザインでしょうか。笑
著者や編集者などにとても気に入っていただけたデザインとなりました。
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本の表紙のデザインは主に3つのベクトルが存在します。
まず第一に、著者や編集者や出版元の全面的な想いを実現するためにデザイナーが力を貸す、というベクトル。
第二に、写真(イラスト)とタイトルは指定されるが、どうデザインするかはデザイナーにお任せ、というベクトル。
そして第三は、タイトル以外に素材も何もなく、デザイナーのセンスにすべてお任せ、というベクトル。
実際にはこのどれにも、著者の想いや意向は反映します。
でも、第一の場合は、事細かく、こんな風にしてほしい、というイメージが具体的なケースで、第二の場合は、イメージを決定するビジュアルはどうしてもこれにしてほしいというのがあるけど、字体や文字の置く場所などはカッコヨクとかカワイクとかしてほしい、という感じのケースです。
第三にしたって、自由に作ったものに対するジャッジはありますから、意向に沿ってなかったらやり直し、というのもあるわけです。
本書は、第三のベクトルで制作されました。
素材も何もないけどよろしくね、的なそれです。笑
第一、第二、第三とそれぞれ本のためには必要だったりいいものにするための手段だったりするのだし、どれが一番いいのか、という話ではありません。
しかもそれぞれに欠陥というかウイークポイントもあったりするものですから。
でも今回は、その第三のベクトルが上手くいった事例でした。
本のタイトル以外のクリエイティブに、デザイナー以外の思惑やセンスが混入することがなかったことも作用して、とてもクリアで自由な印象のデザインに仕上がったのだと思います。そして、それを著者も編集者も気に入ってくれた、といういい気の流れがそのまま印象に繋がってるという感じですね。
本の内容はその本の一番大事な高炉だったりエンジンだったりする部分なのはもちろんですが、その本の顔である表紙のデザインはいわば、その内容をより飛翔させるために存在する部品や装置でなくてはいけないと思うのです。
そのために第一・第二・第三があるのですが、どのベクトルを通しても、上手くいった時のデザインの揚力は素晴らしいものになるものですから。
これからも、そしてどんな仕事でも、
その本に与えられたベクトルで、最大の揚力を生み出したいと思います。